前回の記事では、
独立し、一店舗目を無事出店したところまでを書きました。
(※過去編③参照)
今回はその続き。
いよいよ店舗展開フェーズに入ります。
今回お伝えしたいのは、
「リスク」と「対価」について。
当時のわたしは、
リスク=借金
対価=お金
という極めてシンプルな構図の入り口に立っていました。
初月黒字という快感
急展開で出店した、記念すべき一店舗。
この一店舗目は、借金なし。
自己資金のみで勝負しました。
だからこそ、本当に“自分の実力”が試される一戦でした。
結果は――初月黒字。
過去編①で触れた
“売上爆増システム”がそのまま機能しました。
サラリーマン時代も売上に応じたインセンティブはありました。
でも今回は違う。
売上=会社の利益。
利益=自分の収入。
数字がダイレクトに自分へ返ってくる感覚。
「あ、これが経営か」
あのワクワクは今でも覚えています。
仕事の醍醐味
そこからの半年間。
休みもほとんど取らず、
自分も現場に入り続けました。
どうすればもっとお客さんが喜んで帰ってくれるか。
そのことばかり考えていました。
これは完全に持論ですが、
仕事の醍醐味はここにあると思っています。
明確でもいい。
曖昧でもいい。
何かの目標に向かって、
仲間と夢中で対話すること。
店を閉めたあと、
賄いを食べながら、
お酒を飲みながら、
ざっくばらんに議論を重ねる。
「もっとこうしたらどうやろ」
「こんな企画はどう?」
「明日から試してみよか」
思いつきが翌日採用され、
それがバチっとハマる。
売上が跳ねる。
またそれを肴に飲む。
今思えば、
経営の“け”の字も分かっていなかった。
でも自然と、
対話の中でPDCAが積み上がっていたのだと思います。
楽しくて、勢いがあって、結果も出る。
だから、
「もっといける」と思い始める。
二店舗目という選択
そんなタイミングで、
早くも二店舗目の出店の機会が訪れます。
飲食店というのは、
基本的には物件を取得し、
内装を整え、設備を入れ、
そこで働いてくれる従業員さんを決めていく。
一店舗目は正直、
立地も深く考えず、勢いで契約しました。
幸い結果が良かったから耐えただけ。
だからこそ二店舗目は、
しっかり吟味しようと考えていました。
――そのつもりでした。
230席という誘惑
ある日、前職の社長から電話が入ります。
「お前がやってる居酒屋の街、うちの店舗あるやろ?
そこ、お前らでやってみやんか?」
心臓が高鳴りました。
当時流行っていた全室個室居酒屋。
白を基調とした内装。
空中階のワンフロア。
広い。
とにかく広い。
座敷個室もあればテーブル個室もある。
カウンター個室が3席。
席数は230席。
キッチンは最低4人。
ホールは最低6人。
一店舗目は30席。
約8倍。
家賃も人件費も光熱費も想像がつきませんでした。
でも不思議と、不安よりも
「これ回したらえぐいな」という興奮のほうが勝っていました。
条件も聞かず、
「やらしてください」
即答でした。
交渉しなかったという未熟さ
とはいえ、気になるのは条件面。
幹部と相談すると、当然ながら慎重な意見が出ます。
「もっといろんな人に相談したほうがええんちゃうん」
「絶対なんか罠あるからやめとこ」
「600万と当面の運転資金、どうないするん?」
至極まっとうな意見でした。
わたしも一度は頷きます。
でも最後はこう言いました。
「みんなの言ってることは当然や。
でも絶対大丈夫やし、何とかする。信じてくれ」
完全に感情論でした。
600万という現実
提示された条件は、設備買取600万円。
当時の一店舗目の利益は約80万円。
月商ベースで見れば約2か月分。
サラリーマン時代の年収とほぼ同額。
そして当時の手元資金は約300万円。
貯金の2倍。
決して軽い金額ではありません。
でも当時のわたしは、
「大きいけど、イメージはできる額」
と感じていました。
期待値を考えると、高いとは思えなかった。
足りない分は調達すればいい。
怖さよりも、完全に興奮が勝っていました。
借金という選択
足りない300万円。
そして当面の運転資金。
期限はかなりタイトでした。
銀行や公庫ではスピードが間に合わない。
知り合いを当たりまくりました。
頭を下げて、事情を話し、
「必ず返す」と伝える。
知人からお金を借りたのは、
後にも先にもこれが最初で最後です。
12月オープン。
忘年会シーズン。
一年で最も売上が跳ねる月。
「1月中に必ず全額返済する」
念書を書きました。
これは貸してくれた人への約束であり、
同時に自分へのプレッシャーでもありました。
逃げ道を消した。
絶対に12月で取り切る。
全部返す。
みんなの心配も不安も、
「やって良かった」に変える。
こうしてわたしは借金を背負い、
230席の大箱を抱え、
忘年会シーズンの12月を迎えることになります。
すべては、ここからでした。
次の過去編⑤では、
わたしの人生で最も調子にのっていた時代のはなし
成金すぎて恥ずかしすぎる過去の痛い雑談も書いていければと思います。

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